当コラムでは、これからの障がい者雇用のあり方を示唆する記事をたくさんピックアップしてきました。
それら多くの事例を通じて、障がい者雇用が従来のものから変わろうとしている機運を感じます。
ひいては障がい者雇用の枠にとどまらない「未来の働き方」までが透けて見えてきます。
そして今回取り上げた記事に紹介されている日揮パラレルテクノロジーズ(以下、JPT)も、単なる制度対応ではなく、組織の成長と個人の尊厳を同時に成立させる実例として注目に値する企業ではないかと感じました。
IT×障害者雇用が示す「未来の働き方」──特例子会社の挑戦が変える新常識(NEWSPICKS_20250608)
ということで、例によってこの記事の中から特に印象に残ったものを引用し、その感想を述べてみたいと思います。
“「障害者ができる仕事をつくる」のではなく、「組織に必要とされる業務で障害者の強みをどう活かすか」”
この一文は、障害者雇用の本質的な転換点を的確に捉えています。
これまで障害者雇用は、「社会貢献」や「法令順守」という義務的側面が強調されがちでした。
しかし、JPTはその枠を超え、「企業に必要とされる業務」と「障害者の強み」の接点に着目しています。
これは単なる“雇用”ではなく、“戦力としての共存”を目指すものです。
そしてこの視点こそが、未来の働き方に求められる本質だと感じました。
“決め手となったのは、IT分野に特化した就労移行支援事業所の見学でした。そこでは、精神・発達障害のある人たちが高い集中力や論理的思考力を活かし、AIやWeb制作などの分野で実力を発揮していました。”
この経験が、JPTの立ち上げにおける大きな転機となったことが伝わってきます。
障がいをネガティブな側面で捉えるのではなく、「特性」として活かす。
それがテクノロジーと結びついたとき、まったく新しい雇用の可能性が生まれることを、この事例は教えてくれます。
特に精神・発達障害のある人たちが高い専門性を発揮する姿は、一般的な先入観を覆すものであり、多様性とは“異質を排除せず活かすこと”であると再認識させられました。
“JPTの最大の特徴は「フルリモート・フルフレックス勤務」。社員の多くは全国に分散しており、出社の必要は一切ありません。”
この取り組みが示すのは、テクノロジーの発展によって「働く場所」と「時間」に縛られない柔軟な就労スタイルの実現可能性です。
特に障がいのある方々にとっては、通勤や対人関係といった心理的・物理的負荷が軽減されるだけでなく、自分のペースで働けることが生活全体の安定につながることを示しています。
これは障がい者に限らず、育児や介護など多様な事情を抱える人々にとっても共通する課題の解決策とだと感じました。
“JPTでは「1人1プロジェクト」という体制を基本としています。”
この運営体制もまた、個々の裁量と責任を前提とするものであり、従来の「補助業務」に甘んじていた障がい者雇用の固定観念を大きく覆すものです。
一人ひとりが主役となり、業務の全工程を担う体制は、自信の回復と成長実感を得る大きな要因になると感じます。
また、「対人ストレスの最小化」や「認知のズレによる体調悪化防止」といった視点も実に現実的で、人の特性に基づいた業務設計の重要性を実感しました。
“コミュニケーションは原則としてテキストベース。これは「聞き逃しが不安」「1回で理解できない」「発言のタイミングが難しい」といった声への配慮から生まれたルールです。”
この配慮は非常に象徴的であり、「合理的配慮とは何か?」という問いへのひとつの回答であると考えます。
配慮とは、特別扱いではなく、“機会の平等”を実現するためのデザインです。
働くうえでのストレスを軽減する工夫が、単なる障がい者支援にとどまらず、全社員の働きやすさに貢献している点も、未来の職場のヒントになります。
“全ての応募者に対して1ヶ月間のインターンシップを実施している”
この採用プロセスも非常に印象的でした。
「スキルがあるかどうか」だけではなく、「この職場とフィットするか」「一緒に働き続けられるか」を見極めるための実践的プロセスは、企業と求職者の双方にとってメリットが大きいと感じます。
これは人材の流動性が高まりつつある今の時代において、雇用の質を担保する有効なモデルだと言えるのではないでしょうか。
“JPTの掲げるミッションは『誰もが対等に働ける社会の実現』”
この言葉が、単なる理念ではなく、実際の制度設計や文化として根づいている点が非常に重要です。
とくに「ミッション研修」のような実践を通じて、社員一人ひとりがこの理念を“自分ごと”として捉えているからこそ、組織としての一体感が生まれているのだと思います。
未来の働き方においては、企業文化が一人ひとりの動機づけや働きがいと密接に結びつくことが必要です。
“『障害×〇〇』という“掛け算”の発想”
この柔軟で創造的な発想こそが、未来の雇用において最も求められる視点だと感じました。
従来の「この人は○○ができるか?」という単一的な評価軸ではなく、「この人と○○を掛け合わせたらどんな価値が生まれるか?」という問いの立て方は、すべての人に可能性の扉を開く考え方です。
これはまさに、誰もが主役になれる社会を目指す出発点です。
“JPTはその枠組みにとどまらず、障害者雇用を『組織としての挑戦の場』へと昇華させています。”
特例子会社を「任せる場所」ではなく、「挑戦の場」と位置づけたJPTの姿勢は、組織にとっての障がい者雇用の意味を再定義しています。
JPTが成果を出し続けることで、「障がい者枠」ではなく「JPTに任せたい」と思わせる信頼の連鎖が生まれている点は、まさに“共創”の体現です。
雇用の義務から、価値創造の戦略へ、この発想の転換こそが、未来の働き方を形づくるのではないでしょうか。
“「企業は障害者を“雇う”だけでいいのか」”
この問いは、JPTの取り組みの集大成として、私たち一人ひとりに投げかけられています。
雇用とは、労働力の提供にとどまらず、「その人の人生に関わる行為」です。
企業が人とどう関わるか、どう価値を共に創り出すか、この問いに真剣に向き合うことが、未来の働き方には欠かせないのだと、強く感じました。

サスケ業務推進事業部
36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。
41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。
これからの目標・夢
障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。