ナイトオブシェルヴスⅢ
「なあ、ナイトオブガウェイン」
「……」
「いつまで黙ってるんだ?」
「……」
声明を書くのに失敗した翌晩から、ガウェインはずっと塞ぎこんでいる。王が眠ってから二時間ほど経つが、一向に口を開こうとしない。
どうやら、かなり重症のようだ。昨晩、再び王が眠ってから顔を上げずに俯いていて、その頬に涙一粒。
「確かにさあ、声明書けずにオマケに落っこちて沈んじまうのは分かるけど、そろそろ機嫌直せよ」
「失敗した……」
「そうだな、失敗したな」
完璧主義のガウェインは、自らの失敗が許せないタイプである。そうして、失敗をいつも引きずっている。
彼が何かを失敗した際は、丸三日はそのことしか口に出さず、機嫌が完全に治るには一週間はかかるのだ。
親友であるベディヴィアも、いまだこの面倒な側面には慣れないでいた。
もう終わってしまったことをいつまでも考え、それでいて具体的な解決をしない彼を鬱陶しいとも思っている。
「声明なんてまた書けばいいじゃないか」
「あの時の……、あの熱量でないとダメなのだよ、ナイトオブベディヴィア」
「そのうちまたやる気も熱量も出るって」
「あの時の……、昨夜のあの時の熱量が最高潮だったのだ」
そんなガウェインを見て、ベディヴィアは呆れかえってしまった。これまでも、何度か彼はガウェインに呆れているのだ。
一度の失敗を、しかも何かしら損害がでたわけでもないことをここまで引きずる相棒を見て、どこか情けなく思ってしまう。
何も得られなかった。だが何も失っていない。それでは不十分なのかと、ベディヴィアは常々考えている。
「てかさ……、そんな風に言ってっと、声明なんていつまで経っても出せないぞ」
「分かってはいる…… 、しかし」
俯くのを、ガウェインはやめない。いい加減顔をあげろ、とベディヴィアは内心そう思っていた。
「なあ、おれは思うんだよ」
「何を?」
つづく
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