コラム

ショートタイムワークとは:短時間勤務の先にあるもの

今年4月より、障害者雇用促進法の一部が改正されました。

民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられたことについては、すでにこちらでもお伝えさせていただきましたが、それに伴って従来では考えられなかった画期的な取り組みがスタートしました。

それは、民間企業に義務付けられている法定雇用率の算定基準のハードルが下がり、短時間勤務の働き方についてもより活発化していく流れとなったことです。

つまり、これまでの算定基準は週の所定労働時間が20時間以上というものだったのですが、今後は10時間以上20時間未満の身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の方でも実雇用率上、1人をもって0.5人と算定されることになったということです。

これによって、今後はこうした短時間勤務での求人も増え、長時間の勤務は難しいという理由で就労に結びつかなかった障がい者についても大きなチャンスが出てきたと言えます。

この法改正の背景にあるものは何か?
それを紐解く意味において、非常に参考となる以下の記事がありましたので、今回はこの記事を取り上げながら、今後の障がい者雇用について考えてみたいと思います。

週20時間未満でも働ける「ショートタイムワーク」。障がい者の就労機会が拡大(ソフトバンクニュース_2024.05.17より)

これはソフトバンクニュースからの引用なのですが、ソフトバンクについてはさすがに知らない人はいないと思いますが、ソフトバンクが障がい者雇用において先進的な取り組みをしてきたということについてはご存じでしたでしょうか?

先ほど、今年4月からの法改正により今後は短時間勤務での求人が増えるだろうということを伝えたばかりですが、ソフトバングはなんと今から8年前に今の流れを先取りする形で、短時間勤務の障がい者雇用をすすめていたのです。

“ソフトバンクは、障がいにより長時間勤務が難しい人を対象に、週20時間未満から就業できる「ショートタイムワーク」を2016年から開始。 現在では子育てや介護、がん闘病などで長時間勤務が難しい方にもショートタイムワークの対象を拡大しています。”

ソフトバンクではその短時間勤務の働き方を「ショートタイムワーク」という独自の言葉で定義しています。

先にも触れましたが、8年前からこの思想のもと障がい者雇用を進めてきたということなのですが、何より素晴らしいのは、現在は障がい者に限らず様々な理由で長時間就労が難しい、いわゆる就労弱者すべてにおいてこの制度を適用されている点です。

なぜそのようなことが実現できたのでしょうか。

もちろん、ソフトバンクが単に利潤追求だけにとどまらない社会的な課題にも向き合っている素晴らしい企業だからこそだとは思いますが、この記事をよく読むとそれだけではないということもわかってきます。

“人を採用してから仕事を割り当てる一般的な日本型雇用の新卒一括採用方式とは異なり、先に仕事を決めてその業務ができる人を募集するため、例えば「語学力」や「分析力」のようなシングルスキルで活躍できるというのが大きな特徴です。苦手とする業務や他の人に分担してもらった方が生産性が上がる業務などを切り出し、ショートタイムワーカーに依頼することで、業務を依頼した担当者は空いた時間を自分のコア業務や新しい業務に充てる時間が創出でき、組織全体の生産性の向上にもつなげることができるというメリットがあります。”

短時間勤務であっても、その人が持っているスキルを最大限に活かすことが出来れば、それは企業にとっても必要な戦力となり得るという考え方が根底にあるのですね。

昨今日本においても欧米よりのいわゆるジョブ型雇用が増えてきていると聞きますが、このソフトバンクの事例ではまさに障がい者雇用においてもそれを踏襲しているというわけです。

逆に言えば、「法定雇用率を達成するため」が雇用の目的となってしまうと、どうしても後付け的な仕事の切り出しになってしまい、状況次第では会社としても当事者社員にとっても十分満足のいくものにつながらないということが考えられます。

そう考えると、実際にソフトバンクのショートタイムワークで働かれている方はどのような自己実現がはかられているのかが気になってきますよね。

ここでは具体的な成功事例として、強迫性障がいや広汎性発達障がいを持つAさんやBさんのケースが挙げられていますので、以下にそのまま引用をします。

“一つ目は、50代のAさん。強迫性障がい、広汎性発達障がい、社会不安障がいなどがあり、一般企業に勤めたのはショートタイムワークが初めて。 週1日4時間から出社し、動画内にある対象にタグづけを行うアノテーション作業が仕事でした。Aさんから、「今までは支援側と支援される側で立場がはっきり分かれていましたが、その垣根がないことに気づきました」というコメントが寄せられました。支援者である就労支援機関からも、「ショートタイムワークで働くようになって、自ら問題を解決しようという姿勢が見られ、目に見える成長を感じた」と、考え方や姿勢にも大きな変化があったことが報告されたそうです。ショートタイムワークを「卒業」したAさんは、その後、ソフトバンクで身に着けたスキルを生かし、一般就労しています。”

“二つ目の事例は、広汎性発達障がいで大学を卒業後も就職不安のため研究生として大学に在籍していたというBさん。週1日4時間、最初はアンケートの分析やまとめなど簡単な業務からスタート。最終的にはGAS(Google Apps Script)などのスキルを身につけたほか、積極的に自ら学ぶようになり、職場に必要な存在となったところ、ショートタイムワークを「卒業」して企業へ就職をされたということでした。”

ショートタイムワークとしては雇用最長期間としては5年という制度設計のため、いずれは通常勤務時間への移行や他社への就労に繋げていかなければならないという厳しい面もあります。

しかし、その期間が本人にとっても元々持っていたスキルにさらに磨きをかける成長の場となるのであれば、それが自信となり最終的には短時間勤務を返上することにもつながるのだと思います。

今回の法改正によって、このような取り組みの企業が、今後は徐々に増えてくるのではないかと思います。

とはいえスキルに自信がないという方にとっては、その成長機会の前に採用を得ること自体が難しいと思われているかもしれません。

それは確かに現実的な部分では否定できないのですが、だからこそ自分にとっての強みを理解することや、強みとなるものを探すこと、身につけることがより大事になってくるのだと思います。

そして、今回の記事のように働きながら自己の成長が得られる環境の企業を見つけること、知ることも大事ですね。

そこから自ずと具体的な目標や行動が決まっていくのだと思います。

就労移行支援 サスケ・アカデミー本部
本部広報/職業指導員
三浦秀章
HIDEAKI MIURA

36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。

41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。

これからの目標・夢

障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。

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