コラム

引きこもりの人への希望:内覧ロボット「ミレルン」

昨年6月に『障がい者の新たな働き方:未来のテレワーク』と題して、分身ロボット「オリヒメ」を介して活躍する障がいのある方の記事を取り上げましたが、今回はそのオリィ研究所の取り組みとはまた異なる、不動産テック企業カーザロボティクスが手掛けるアバターロボット「ミレルン」のことについてご紹介したいと思います。

引きこもりスタッフが大活躍――接客ロボットの操縦が切り開く新たな働き方(Yahoo! JAPANニュース_2024.02.04)

前回はカフェでの接客でしたが、今回はなんと住宅展示場での内覧接客です。

カーザロボティクスの細谷社長の記事や、動画の中にあるインタビューでも語られていますが、全国で115万人もいると言われている「引きこもり」の人への雇用機会として成立するのではないかということで取り組み始めたとのことです。

“「営業マンがいると、お客さんはどうしても買わされる圧を感じて緊張してしまう。無人にすることでお客さんが家を気軽に自由に見て回って、まずはこの家を好きになってもらう。そんな中で場を和ませる存在としてロボットがあればいいなと思いました」”

上記の見立ては見事に当たったようです。
つまり、引きこもりの方にとっても、顧客側にとっても、そして会社側にとってもそれぞれに恩恵がある、いわゆる「三方よし」が実現しているわけです。

記事にもミレルンの画像が写っていますが、ほんとうに愛らしいロボットで見ているだけでほっこりとした気分にさせられますよね。
特に子供さんにはかなり受けがいいというのもよくわかります。

またこの記事の中では、大阪市在住の摘枝ソロルさんが群馬県前橋市にある住宅展示場のモデルルームの接客をしていることに触れ、彼女自身のバックグラウンドとともに「引きこもり」経験を持つ人が活躍している姿にクローズアップしています。

“ロボットの遠隔操作は引きこもりの経験者には取り組みやすい仕事だったが、住宅販売という慣れない場でのコミュニケーションには戸惑いがあった。当初は客からの質問に答えられず、できたのはあいさつ程度。それでも、接客を重ねていくうちにお勧めポイントを積極的に案内したり、コミュニケーションを取ったりすることができるようになっていった。”

彼女のバックグラウンドについては記事に詳しくありますが、中学くらいから家庭の事情で引きこもり、リストカットなども繰り返したりと、かつてはほんとうに苦しんでいたようです。

そんな彼女がまず今の活躍に至るきっかけとなったのが、引きこもりの当事者や経験者の就労支援をしている株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで(めちゃコマ)」に就職できたということです。
就労支援に取り組んでいる会社という環境もあり、彼女にとって自己実現できる場となったことは想像に難くありません。

そして、そのめちゃコマとカーザロボティクスが手を組んだことによって、今回のミレルンでの新たな仕事にまで繋がったというストーリーです。

“「最初はミレルンでのあいさつや眼の前のことをこなすのに精一杯でしたが、現場での悩みや、『より良くするにはどうすべきか』とカーザロボティクスさんと対話を続けていきました。常に誠実にフィードバックや反映をしてくれたので、それで自分もやる気が高まっていき、ミレルン業務をどう盛り上げていったらいいか、売上に貢献できるようにより良い案内をしたい、という気持ちが強まってきました」”

上記の彼女のコメントからもわかるように、ミレルンを介しての仕事の成長ぶりをみると、引きこもりの方でも対面でのコミュニケーションがないのであれば、潜在的に眠っている能力を引き出されるものなのだということが十分伝わってきます。

そのことを、カーザロボティクスの細谷社長も以下のようにコメントされてます。

“「引きこもりであることとコミュニケーションの好き嫌いは、別の問題なんだということに気付かされました。ミレルンのような新しい技術をうまく取り入れることで、引きこもりと言われている人たちが労働市場だと見られるようになったらいいなと思うようになりました」”

このコメントにはまさに前回の記事同様、未来のテレワークとしての可能性が秘められていると思います。

引きこもりの方のなかには、プログラミングや事務などの一般的なパソコン業務自体が苦手な方もいると思います。
しかしそんな方でも、対面でなければ人とコミュニケーションが取れる方にとっては希望の働き方と言えます。
摘枝さんもそうだったように、最初は戸惑うなかでのスタートとはなりますが、ミレルンという協力な仲間、相棒と付き合っていくことで、知らず知らずのうちに自分でも驚くような成長を遂げていくのだと思います。

完全に余談ですが、今NHKで『正直不動産2』というドラマをやっています。
まだ見ていない方へのネタバレとなってしまってはいけないので詳しくは言えませんが、タイトルからも推察されるように、住宅内覧の接客のシーンが毎回出てきます。

ドラマの主旨としては、嘘のつけない主人公の不動産営業マンが、毎回いろんな事情を抱えた顧客に対して、自社の利益のことなど度外視して正直に接客することによって、結果的に顧客の幸せに導いていくというもので、いつも感動させられているドラマです。

ただ、私がもっと注目しているのはその主人公ではなく、その主人公の部下である十影君の存在です。

十影君は、給与や出世よりプライベート第一で、タムパ(タイムパフォーマンス)重視で残業は一切しないといったスタンスで、社内ではどちらかというと問題児のような存在です。
彼には、そうなるだけの過去のつらい家庭環境があったのですが、それについては詳しくは触れません。

しかし、その十影君が回を追うごとに上司である主人公のもとで同行営業を繰り返すなかで徐々に成長していく様が描かれているのです。

たまたま「不動産」というキーワードで半ば強引に引用してしまいましたが(笑)、誠に勝手ながら摘枝さんの成長ぶりと少しリンクさせてしまいました。

人とのコミュニケーションには、大きな可能性があります。

ミレルンを介した引きこもりの方にとっても十影君にとっても、不動産営業という「人とのコミュニケーション」のなかで、失われていた光を取り戻すものになってほしい。

そう心から願っています。

就労移行支援 サスケ・アカデミー本部
本部広報/職業指導員
三浦秀章
HIDEAKI MIURA

36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。

41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。

これからの目標・夢

障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。

車いす社員みうらさんのプロフィール詳細→こちら

車いす社員みうらさんBLOG カテゴリTOP→こちら

PAGE TOP