コラム

障がい学生対象のオープンカンパニーとは

先月の当コラムでは、「就労支援×企業」コラボの可能性と題して、障がいのある学生を対象に、ブルームバーグが取り組んだ企業見学イベントを紹介しました。

企業側から就労支援事業所や大学に連携を持ちかけて実施したという点を強調させていただいたのですが、実は少しアプローチの異なる企業見学イベントに関する新たな記事があり、こちらもまた非常に興味深い内容でしたので今回も引き続き取り上げてみました。

障がいのある学生を対象にオープンカンパニー 多様な従業員が活躍できる環境を説明 オンラインで、大同生命保険が初の開催(OVO_2024.09.06より)

まずオープンカンパニーという言葉が印象的ですね。

これは就活用語で、企業などが就活生を対象に実施する説明会・イベントのことを言い、インターンシップとはまた異なる定義のようです。

わかりやすく言うと、大学が受験生や保護者向けに学校を紹介する「オープンキャンパス」の企業版的なイメージです。

今回は、大同生命保険が実施したオープンカンパニーの記事なのですが、なぜ取り上げたのかというと、タイトルにもありますように障がいのある学生を対象としたものだったからです。

“同社によると、「障がい者雇用」枠ではなく、一般雇用としての総合職、システム担当を前提としたオープンカンパニーの開催は初めて。入社後は、障がいへの合理的な配慮をしつつも、社内のキャリアアップ、給与体系などは、健常者の総合職と同じ待遇となるという。”

障がいのある学生を一般枠として受け入れるというこの取り組みについては、私の不勉強もあるかもしれませんが、あまり聞いたことがありませんでした。

企業の障がい者雇用枠採用については、色々な意見、考え方があると思います。

人によっては、なぜ分けるのかというような抵抗感を感じる人がいるとも聞きます。

しかし、一方ではジョブコーチなどのサポート体制や合理的配慮などの障がいに対する理解がある環境のおかげで、ずっと長く勤められている人が多いのも事実です。

今回の事例については、前者のような障がい者にとっては待ち望んでいたものなのかもしれません。

障がいといっても様々な程度、事情があるので一概にひとくくりにできるものではありませんが、現状の企業の障がい者採用において、一般枠(あるいは正社員)として募集しているものはまだまだ少ないというのが現実です。

そんな状況のなか、あえて障がいを伏せてまで一般枠に挑戦(クローズド)する人もいますが、そんな人にとっては堂々と自身の障がいを開示したうえで挑戦できる、希望のある会社とも言えます。

ここで重要なことは、今年4月から義務化された合理的配慮が十分行き届いている会社に一般枠として入社できることですね。

“先輩社員の説明後、参加した学生全員から質問が出た。「障がい者であることをカミングアウトすることで、気を使われてしまうのではないか」に対して、先輩社員からは「伝えるタイミングは人それぞれで難しいと思いますが、社内において周囲に伝えたことで気を使われたことはありません」と自身の体験を語った。”

上記先輩社員の言葉にもありますように、大同生命保険ではすでに障がいを受け入れる企業風土が備わっていることが伺えます。

実は私自身も、今の会社では他の社員と何ら変わらない形で仕事をさせていただいています。

特に在宅勤務ということもあり、車いすでいることでさえ相手に感じさせることもありません。

おそらく、他の社員は普段の仕事のやりとりのなかで私が障がい者であるという意識を持って接している人はあまりいないと思います。

かといって全く障がいのことを失念しているという状態でもなく、配慮がないというわけでもありません。

つまり私の体感としても、大同生命保険のような取り組みは現実的に可能だと思っています。

障がい者にとって、「障がい」という区分をしてもらうことでの恩恵はかなり大きいと思います。

しかし、一方では「障がい」という区分によってあらぬ偏見や無意識的な差別対応が存在しているのも事実です。

現状の企業の障がい者雇用においても、障がい者のQOLの観点から見た場合、まだまだ課題が多いと言えるのではないでしょうか。

最後に、記事の締めくくりとしてあった大同生命保険の人事総務部大阪人事課・乘本典子係長の以下の言葉を以下に引用します。

“「中小企業とともによりよい未来社会を創(つく)ることを目指し、実現するためには、多様な『人財』が必要です。障がいのある方を一くくりに考えるのではなく、障がいの特性にあわせて活躍いただける環境を整備し、自分らしく働き、その成長を社会に還元していくことで、中小企業の課題解決に貢献していきたい」”

今後、このようなスタンスの企業が増えてくることを期待したいですね。

就労移行支援 サスケ・アカデミー本部
本部広報/職業指導員
三浦秀章
HIDEAKI MIURA

36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。

41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。

これからの目標・夢

障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。

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