コラム

ASDのトップセールスマンの記事から思うこと

「大人の発達障がい」という表現は最近よく聞きます。

今回取り上げた記事もまさにそのテーマであり、なかでも学生時代にASDの診断を受け住宅メーカーに就職した男性のお話がたいへん印象に残りました。


 

“営業の部署に配属された男性は、営業の際に自社の住宅の悪い部分もすべてお客さんに話してしまうため、上司としては頭を抱えていたそうです。しかし上司の悩みとは裏腹に、彼の業績はどんどん上がっていきました。”

 
こんなことって実際にあるんですね。

私も営業をしていたのでわかるのですが、モノの良さではなく人で買ってもらうというケースは確かにあります。

誠実な対応の積み重ねがそうさせるわけですが、それでもさすがに自社の悪い部分まで正直に話すというのは営業としてはご法度なので、この男性がトップセールスマンになったという事実には本当に驚きました。

ASDに関しては、空気を読めないという部分がよく取り上げられますが、今回の事例はその特性が結果的に功を奏しているわけですから、一概に良し悪しを決めつけることはできないんだなと思わされました。
 

“一人ひとりに適したアプローチを行えば、双方が快適に働けるようになる”
“「あの人は変わってる」と、発達障害傾向がある人を遠巻きに見る時代は終わりつつある、と語る”

 
この一文から、昔営業をしていたころ部署内で「ちょっと変わっている」という見方をされていた部下がいたことを思い出しました。

今思えば、その傾向から何かしらの障がいがあったかもしれないのですが、当時は本人も含めて誰もそういう捉え方はなく、単に「変わっている」「落ち着きがない」という部分において叱責することが多い部下でした。

しかし今冷静になって振り返れば、非常に真面目で一生懸命さにおいては同期では随一でした。

結果的にその部下は辞めていったのですが、当時本当に彼のことを理解して指導出来ていたのかと言われれば自信がありません。

すべては憶測に過ぎませんが、仮に障がいから起因している行動だという認識があれば、また違ったアプローチで彼を活かすことが出来たのかもしれないと思うと後悔の気持ちが出てきます。
当時は障がいのこと自体の理解もなかったので、そのようなことの想像力さえ欠けていました。

先の事例では、トップセールスマンになったことや障がいをオープンにしていたことによって、上司も障がいに対して前向きに受け止められたのかもしれません。
ただ、逆の結果の場合やクローズの場合はどうだったのだろうと考えると、少し重たい気持ちになります。
 

“社内で孤立しがちだった発達障害がある人々も、適切なサポートと環境を整えれば大きな戦力になる。まずは“一人ひとりが貴重な働き手である”ということを多くの人が認識するのがスタートラインかもしれない“

 
まさにこの言葉に尽きますね。

大人になってから障がいの診断を受けている方は、ご自身の特性を上司にも理解してもらえるよう正しく伝えることが大切です。
上司のほうもそのような部下に対してはその障がいの理解に努めなければなりません。

また社内で孤立しがちな人のなかにはもしかしたら、本人も自覚していない何かしらの障がいを抱えている人がいるかもしれません。
それを周りから詮索するわけにはいきませんが、発達障がいに対する認識・理解とその想像力があれば、上司としてのマネジメントもちょっと違った視点からアプローチできるかもしれません。

潜在層を含めてかなりの数の方が障がいを抱え、実際には優れた能力の部分を活かせず苦しんでいる現実があります。
そういった方が活躍できる社会となるためにも、障がいに対するひとりひとりの正しい理解がもっと必要だということをあらためて痛感しました。

就労移行支援 サスケ・アカデミー本部
本部広報/職業指導員
三浦秀章
HIDEAKI MIURA

36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。

41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。

これからの目標・夢

障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと

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