「周りに気をつかってしまい、自分の意見を言えない…」
「一人が好きで誰かと過ごすと疲れてしまう…」
他人と関わることに過度なストレスを感じていてつらいとき、それは「愛着」の問題から生じている悩みかも知れません。
本記事では、大人の愛着障害について解説します。
愛着障害の特徴や他の問題との関連、悩み別の治し方のヒントも紹介しています。
対人関係で気を遣いすぎてしまう人はぜひ参考にしてみてください。
目次
大人の愛着障害とは?
愛着障害とは、幼少期に生じたさまざまな原因から、母親や父親などの養育者との愛着がうまく形成されなかった状態をいいます。
養育者との関係は、その後の対人関係の基盤になるもので、成長を通して友達や学校の先生、先輩、恋人と広がっていきます。
しかし、愛着形成が十分でないと、その後の対人関係に影響を及ぼします。
たとえば、人に対して過度に警戒してしまったり、もしくは誰にでも馴れ馴れしく接したりするなどの様子です。
具体的にはどのような特徴があるのでしょうか。
愛着=特定の人にもつ心理的な絆
愛着とは、人間が特定の人との間にもつ心理的な絆のことをいいます。
多くは赤ちゃんのころに養育者との間で築かれ、その後の対人関係の基盤となるものです。
赤ちゃんのときは、言葉で要求を伝えられません。
泣くことでさまざまな要求を伝え、そこに養育者が適切に応答することで、赤ちゃんは安心感を得られるようになります。
養育者を「安心できる場所」としてよりどころにしつつ、他の人へと関係性が広がっていくのです。
愛着形成が不十分なことが原因
愛着形成は、養育者との関係の中で育まれますが、ときには十分に形成されなかったり、形成に歪みが生じたりすることがあります。
たとえば、養育者との関係で以下のような出来事がある場合です。
- 離婚や死別
- 厳しいしつけや虐待
- 育児放棄、ネグレクト、子どもへの無関心
- 他の兄弟との差別
愛着形成の対象となる養育者がいなかったり、子どもが伝えた要求に適切に答えられなかったりした場合、愛着障害が生じる可能性があります。
人との関係の中で安心を感じられなかったため、その後の対人関係でも強い不安や恐怖を感じ、過度に警戒してしまうのです。
対人関係の悩みを生み出す不安定型愛着スタイル
養育者との愛着形成が不十分であると生じる愛着障害ですが、その頻度はまれです。
そのため、少しでも愛着形成がうまくいかなければ愛着障害になるとはいえません。
対人関係の悩みが親との関係が原因だとする人の多くは、愛着障害ではなく「愛着スタイル」の問題だといえます。
愛着スタイルとは、他者との関係構築に関する心理的な傾向を指す言葉です。
「人はみな○○な存在だ」というイメージや「認めてもらいたい」「迷惑をかけたくない」などの感情を含みます。
大人の愛着スタイルは以下の4つに分類されます。
- 安定型:愛着の対象がいつまでも自分を愛し続けてくれると信じている
- とらわれ型:他者と親密になりたいと強く願うが信頼できない
- 拒絶型:他者とは一定の距離を置き、依存せず自立しようとする
- 恐れ型:自分には愛される価値がなく、他者は信頼できない
安定型以外の愛着スタイルは「不安定型愛着スタイル」として、対人関係上の悩みを引き起こします。
対人関係で起きる出来事をネガティブに捉えてしまい、ストレスを感じやすくなるでしょう。
3つの不安定型愛着スタイル
対人関係上の悩みにつながる不安定型愛着スタイルですが、具体的にはどのような形で対人関係上のストレスを引き起こすのでしょうか。
とらわれ型
とらわれ型の愛着スタイルの人は、対人関係に対して強い心配や不安を感じやすく、人から嫌われることを避けようとします。
そのため、意思表示が苦手で周囲の人の欲求に合わせようとする特徴があります。
他者の顔色をうかがい、自分の意見が言えないという場合、とらわれ型の愛着スタイルが影響しているかもしれません。
反対意見を言うと周りから嫌われてしまうかもしれないと不安になり、自分の意見を抑えてしまうのです。
拒絶型
拒絶型の愛着スタイルは、親密な関係を築こうとせず、相手から拒否される不安や恐怖を感じないことが特徴です。
他者に依存せず距離を保つ一方で、人からストレスを与えられると感情的になってしまうことがあるでしょう。
そのため、他者との距離感が近く、一致団結して目標を達成しようとするコミュニティでは、ストレスを感じやすいかもしれません。
また、感情的にドライであるため、他者にうまく共感できず、安定した対人関係を築きにくいところもあるでしょう。
恐れ型
恐れ型は、とらわれ型と拒絶型の両方の特徴を持つ愛着スタイルです。
他者から拒否される不安が強いため、表面的には関わりを避けようとしているようにみられます。
しかし、根底では親密な関係を望んでいることが特徴です。
拒絶された体験に何らかのトラウマを抱えており、関係をうまく築けずに引きこもりのようになってしまうこともあります。
幼少期の経験がその後の対人関係を形成する
愛着障害は、養育者との愛着形成がうまくいかず、その後の対人関係に影響を及ぼすものです。
愛着障害とされるレベルでなくても、愛着スタイルの問題から対人関係の悩みを引き起こす場合があります。
ただ、愛着の問題の背景には、親子関係だけでなく発達障害や性格傾向など、他の要因が関係していることも少なくありません。
対人関係で我慢することや距離感に悩んでいる方は、専門の医療機関を受診し、原因について専門家の意見を聞いてみましょう。