コラム

コミュニケーション障害とは?会話が苦手な原因となる疾患と対処法を解説

生活していく中では、人とのコミュニケーションは欠かせません。
中には、「会話が続かない…」「言葉が出てこない…」など、人とうまくやり取りができないという悩みを抱える人もいるのではないでしょうか。

流暢に話せなかったり、場面に合わせた言動が取れなかったりする場合は、何らかのコミュニケーション障害の可能性があります。
今回は、コミュニケーションに支障をきたす可能性のある疾患とその対処法について解説します。

1.コミュニケーション障害がもつ2つの意味

コミュニケーション障害は、何らかの原因によりコミュニケーションに支障をきたす障がいです。

「極度の人見知り」「会話のキャッチボールが苦手」と、やり取りが苦手な特徴から、発音や発達の遅れなどの医学的な障がいまで幅広い概念を含みます。

 1-1 人とのやり取りが苦手な「コミュ障」
他人とうまく話せない人を「コミュ障」という言葉で表現することがあります。

「人と話すのが苦手な人」という広い範囲を含む特徴を表す言葉です。

具体的には、緊張が強く話せない人見知りの人やキャッチボールが苦手で一方的に話す人などを指します。

引っ込み思案であったり、自己主張が強かったりと、個人の性格だと捉えられがちですが、背景には何らかの障がいが影響している場合もあります。

コミュニケーションの困難さを引き起こしている原因を明らかにし、適切な対処を取ることが必要だといえるでしょう。

 1-2 医学的な5つのコミュニケーション障害と関連する疾患
では、コミュニケーションの困難さを引き起こす障がいや疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。

診断基準の1つであるDSM-5では、以下の5つがコミュニケーション障害に含まれています。

・言語障害
・語音障害
・小児期発症流暢性障害
・社会的(語用論的)コミュニケーション障害
・特定不能のコミュニケーション障

さらに、5つの障がい以外でも、以下のコミュニケーションの困難さに繋がる疾患があります。
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
・注意欠如多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
・社交不安障害

「コミュニケーションが苦手」という悩みに、どのような障がいや疾患が影響を及ぼしているかを特定し、適切な対処を考えることが必要です。

2.コミュニケーションの困難さを引き起こす疾患と対処法

コミュニケーションの困難さを引き起こす9つの障がいや疾患は、具体的にどのような特徴があるのでしょう。

コミュニケーションに影響する支障の4つの種類に分けて説明します。

2-1 言語習得が難しい:言語症・学習障害
言語障害や学習障害、知的障害では、話す・書くといった言語表現に必要な語彙や文法などの言語習得の困難さがみられます。

具体的には「考えを伝えるための言葉が分からず、的確に伝えられない」「文章を組み立てるのが苦手」といった困難さがみられやすいでしょう。

 2-1-1 言語障害
言語障害とは、言語の習得や表現に困難さがみられるコミュニケーション障害の1つです。

例えば、語彙が少ないために思いを言葉にできなかったり、文章の主語と述語が混同してしまったりするなど、分かりやすく伝えられないことが生じます。

乳幼児期までに発症することが多いとされます。

また、運動や聴覚、その他の感覚器官に異常がなく、言葉にのみ障がいがみられることが特徴です。
治療に関しては、言語聴覚士による療育やリハビリテーションが主となります。

 2-1-2 学習障害
学習障害とは、知的能力の遅れがないにもかかわらず、学習上の困難さがみられる発達障害の1つです。

具体的には、「読む」「聞く」「話す」「書く」「計算する」「推論する」という学習能力のうち、1つ以上をうまく発揮できない状態をいいます。

学習障害においても、「読む」「聞く」「話す」「書く」といった言葉に関する能力を発揮できないと、コミュニケーションで困ることがあるでしょう。

例えば、聞く力が弱いために、話が理解できずに会話についていけないということが起こりえます。

対処法としては、苦手分野を他の能力で補えるよう、環境調整を行うことが大切です。

聞く力が弱い場合は、会議の内容をボイスレコーダーで録音させてもらうなど周囲に協力してもらう必要があるでしょう。

2-2 言葉の発音や流暢さに支障がある:語音障害・小児期発症流暢障害(吃音症)
さまざまな言葉を知っていても、うまく発音できなかったり、詰まってしまったりすることで相手にうまく伝わらないことがあります。

発音や言葉の流暢さ、リズムに問題がみられるのが、語音障害や小児期発症流暢性障害(吃音症)です。

 2-2-1 語音障害
語音障害とは、思っている言葉をうまく発音できないコミュニケーション障害の1つです。

舌足らずな発音であったり、口から空気が漏れるような音であったりするなど、正しい発音が難しい状態をいいます。

通常の発達では、7歳ごろまでに大半の言葉を明瞭に発音できるようになります。
7歳を過ぎても発音の誤りがみられる場合、語音障害が疑われます。治療としては、言語聴覚士による言語療法により改善されることが多いでしょう。

 2-2-2 小児期流暢性障害(吃音症)
小児期流暢性障害とは、吃音ともよばれる症状であり、会話の流暢性(スムーズさ)が年齢に比べて低いコミュニケーション障害です。

2~5歳までに発症することがほとんどであり、以下のような症状が特徴です。

症状説明具体例 「こんにちは」
連発型音の一部を繰り返して発音してしまう。「こ、こ、こ、こんにちは」
伸発型言葉の一部を伸ばして発音してしまう。「こーー、こんにちは」
難発型言葉を発しようとすると詰まってしまう。「……っこんにちは」

3つの症状は1つだけではなく、重複して起こることもあります。

治療法としては、言語療法やカウンセリング、環境調整などが有効とされています。

スムーズな発話の練習とともに、緊張しないメンタルや環境づくりが必要だといえるでしょう。

特に、言葉が詰まってしまう場合には、相手に頑張って伝えるのに必死で、かえって緊張が高まるという悪循環に陥りかねません。

言葉だけではなく、図やイメージを活用して説明することを心がけると緊張が少し和らぐでしょう。

2-3 文脈や場面に応じた発言が苦手である:ASD・ADHD・社会的(語用論的)コミュニケーション障害
言葉を理解していても、文脈や場面に合わせた発言ができないというコミュニケーション障害もあります。

発達障害に分類されるASDやADHD、コミュニケーション障害の1つである社会的(語用論的)コミュニケーション障害がこれに当たります。

 2-3-1 ASD・社会的(語用論的)コミュニケーション障害
ASDとは、「相手の意図を汲み取るのが苦手」「言葉通りに受け取ってしまう」などの特性をもつ発達障害の1つです。

特性によって、場面にあった発言ができない、何を話していいか分からないといったコミュニケーション上の支障が起きやすいでしょう。

社会的(語用論的)コミュニケーション障害とは、状況に合わせた話し方や会話のルールに沿うことが難しいという症状がみられます。

ASDと類似したコミュニケーション障害であり、冗談や比喩表現などあいまいな物事の理解が苦手な特性があります。

このような特性が背景にある場合は、コミュニケーションを行う上での「暗黙のルール」を言葉にして理解することが大切です。

例えば、声の大きさであれば、「自宅を100とするなら、職場は70くらいに抑える」と数値化するとよいでしょう。

 2-3-2 ADHD
発達障害の1つであるADHDも、うまくコミュニケーションを取れない原因に繋がることがあります。

ADHDは、「集中できない」「突発的に行動してしまう」といった特性があるため、話を聞き逃してしまったり、不用意な発言をしてしまったりしやすいでしょう。

話を聞き逃してしまう場合は、「聞き逃したからもう一度教えてください」とお願いしましょう。

複数回続くと嫌な印象を与えてしまうかもしれないので、断片的な情報から話の内容を推測できるよう、練習をしておくのもおすすめです。

2-4 特定の場面でうまく話せない:社交不安障害
雑談や初対面の人とのやりとりで、強い不安や恐怖を感じる場合には、社交不安障害の可能性があります。

日本では、対人恐怖症とよばれていた病気であり、人から注目を浴びたり、恥をかいたりすることが怖くて、対人関係を避けてしまうものです。

社交不安障害は、人前で恥ずかしい体験をするというように、きっかけになる出来事があることが多いでしょう。

恥ずかしい思いをしないように、頭の中で話す内容を繰り返したり、言葉数を減らして話さなかったりするなどの様子がみられることが特徴です。

治療法としては、恥ずかしい思いを避ける行動を徐々に減らしていくことが重要になります。

避ける行動を繰り返すと、過度に自分へ注目してしまい、不安を感じやすくなるからです。

自分が話している姿を録画して実際に見てみるというのも、ネガティブな自分のイメージを修正するのに役立つでしょう。

3.まとめ

コミュニケーションで困ることは、誰でも起こりえるものです。

内向的な性格が原因になるものもあれば、何らかの病気や疾患があることも考えられます。
コミュニケーションでうまくいかない原因が何にあるのか、今回紹介した症状をもとに整理してみましょう。

サスケ・アカデミーでは、コミュニケーション能力を高めるグループワークをプログラムとして行っています。人と話すのが苦手という方も、お気軽にご相談ください。

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