コラム

療育手帳は誰が対象?大人や発達障害の人は申請できる?制度や判定基準について解説

就労支援センターやグループホーム、訓練施設など、福祉サービスを受ける際には、障害者手帳があるとスムーズに受けられることがあります。

身体障害や精神障害があると手帳が交付されるように、知的障害があると、療育手帳が交付されます。

福祉サービスの利用に活用できる療育手帳ですが、次のような疑問を持つ方もおられるのではないでしょうか。

「大人になってからでも申請できるのか?」
「発達障害と診断されているけど療育手帳をもらえるのか?」

療育手帳は、根拠となる法律がなく、各自治体に運用が任されているため、理解がやや難しいといえます。

今回は、療育手帳をスムーズに申請できるよう、対象となる範囲について解説します。

1.療育手帳とは?

療育手帳とは、知的障害があると判定された人に交付される障害者手帳です。

療育手帳を取得することで、就労支援やグループホームへの入所など、障害者総合支援法に基づく福祉サービスを受けられます。

また、医療費や公共サービスの割引が受けられるなど、様々なメリットがあります。

「愛の手帳(東京都)」「みどりの手帳(埼玉県)」など、自治体によって名称が異なることが特徴です。

身体・精神障害者手帳には根拠となる法律がありますが、療育手帳にはありません。

通知という形で国がガイドラインを示し、実際の運用方法は各自治体に任されています。
そのため、名称が異なり、判定基準も自治体により独自に設定されています。

制度が完全に統一されていないため、理解するのにやや苦労する制度だといえるでしょう。

2.療育手帳の対象となる人は?

療育手帳の対象となる人には、どのような人が含まれるのでしょうか。

2-1 知的障害があると判定された人に交付される
児童相談所もしくは知的障害者更生相談所で「知的障害がある」と認められた人に交付されます。

知的障害とは、知的機能の制限により、読み書きや計算、お金の管理などの日常生活への支障が起こる障がいです。

発行元は各都道府県であるため、住んでいる地域の児童相談所もしくは知的障害者更生相談所で判定を予約し、交付が受けられます。

2-2 大人でも申請できる
知的障害は、18歳未満の発達期から知的機能の遅れがみられるため、18歳までに療育手帳を申請し交付を受けることが多いといえます。

ただ、療育手帳は大人になってからでも申請が可能です。

障がいの程度が軽く目立たないために発見が遅れてしまう場合があるからです。

しかし、自治体によっては、18歳以前に受検した発達検査の結果や第三者による幼少期の様子などの資料が必要なことがあります。

大人になるまでに知的機能の遅れがみられたかを判断するためです。

申請にあたってのハードルが少し高くなる可能性もあるので注意が必要でしょう。

また、成人してから事故の影響で知的な機能に障がいが残ることもあります。
その場合は発症が18歳未満ではないため知的障害には当たらず、療育手帳の対象とはなりません。

麻痺や言語障害がある場合は身体障害者手帳、記憶や集中力の障害がみられる場合は精神障害者福祉手帳の対象となります。

2-3 発達障害でも知的障害があれば申請できる
知的障害と混同しがちなのが、発達障害です。

発達障害とは、脳の一部の機能の発達が遅れており、日常生活に支障を生じる精神疾患の1つです。
それに対して、知的障害は全般的な知的機能の発達が遅れているという違いがあります。

機能の発達に遅れがみられるという点が共通しているため、知的障害と発達障害を併発していることが少なくありません。
そのため、発達障害に知的障害が伴っている場合は、療育手帳の対象となります。

しかし、知的機能の遅れがみられない発達障害の場合に対象となるのは、精神障害者福祉手帳です。
実際には明確な線引きが難しい2つの障害ですが、手帳交付には診断が必要です。

判断が難しい場合は、かかりつけの主治医に相談してみましょう。

3.療育手帳の判定基準は?

療育手帳の判定は、18歳未満は児童相談所、18歳以上の成人は知的障害者更生相談所で行われます。

検査や聞き取りにより、知的機能(IQ)や日常生活能力を評価するのが主な判定内容です。

IQが概ね70以下で日常生活において支障をきたしていると判定されると、療育手帳が交付されます。
具体的には、どのような基準で判定が行われるのでしょうか。

療育手帳は障がいの重症度により複数の等級に分けられることが特徴です。

国が示すガイドラインでは重度なものを「A」、それ以外を「B」とするよう推奨されています。等級は自治体により差がありますが、A1、A2、B1、B2などと、さらに細分化して定めていることが多いでしょう。

【等級の例】

最重度(IQ20以下)重度(IQ21~35)中度(IQ36~50)軽度(IQ51~75)
東京都1度2度3度4度
愛媛県A最重度A重度A中度/B中度B軽度
徳島県A1A2B1B2
香川県AB
岡山県A     A BB

【各等級の特徴】
最重度IQ20以下であり、言葉のやり取りは困難で生活するために常に援助を必要とする。寝たきりである場合も多い。

重度IQ21~35であり、簡単なコミュニケーションや動作はできるが、食事や身支度には常に見守りが必要である。

中等度IQ36~50であり、コミュニケーションや簡単な読み書きなどは可能。日常生活に必要なことはできるが、自立した生活が難しい場合がある。

軽度IQ51~75であり、複雑な物事の理解は苦手だが、基本的な生活に関する動作が可能である。

4.療育手帳制度を正しく理解し、適切な支援を受けましょう

療育手帳は、各自治体により制度が異なるため、理解がやや難しいところがあります。

判定を受けたり、様々な資料を準備したりと労力を費やすこともありますが、支援を受けるためのメリットは大きいといえます。

お住まいの自治体の療育手帳制度を正しく理解し、適切な支援を受けましょう。

サスケ・アカデミーでは、知的な障がいで困っている方に向けて、働くための準備をサポートしています。
療育手帳をお持ちでない方も、ぜひ一度ご相談ください。

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