就労先を探すときには、自分に合った職種や職場が見つけられなかったり、障がいの特性に合わせた環境が整っていないことがあります。
そういった場合は、就労移行支援や就労継続支援などの福祉サービスを受けながら、訓練を通して自分に合った職場を見つけていくことが多いでしょう。
ただ、近年就労系の福祉サービスは数多くあり、利用者自身が自分で選択していくことが難しくなってきています。そのような背景の中で、2024年から開始されるサービスが就労選択支援です。
就労選択支援は、障がい者が自分に合った福祉サービスや事業所を主体的に選択できるようサポートするものです。今回は、障がいをお持ちの方にメリットのある就労選択支援について、解説します。
1.新たな就労支援制度「就労選択支援」とは?
就労選択支援は、障がい者の多様化する就労ニーズに対応した新しい支援サービスです。具体的には、利用する人の能力や希望、配慮事項を事前に把握し、個人のニーズに応じて就労先を選択できるようサポートする仕組みが想定されています。障害者総合支援法の改正案に含まれており、2024年4月1日施行予定です。
就労選択支援の導入の背景には、就労系福祉サービスから自分に合ったサービスを選択しにくいという問題があります。就労系福祉サービスに含まれる3つの事業は、以下のように全国に数多くあり、利用者は自分に合う事業所を選ぶ必要があります。
- 就労移行支援 : 3353カ所
- 就労継続支援(A型): 4130カ所
- 就労継続支援(B型): 14407カ所
就労選択支援では、就労系福祉サービスの利用の前に、利用者の能力や必要な配慮などを整理し、適切なサービスに繋げられるよう支援を行います。
2.就労選択支援の利用方法とは?
就労を考える障がい者を助ける就労選択支援ですが、どのように利用できるのでしょうか。
障がいの種類に関わらず、身体、知的、精神の障がいをお持ちの方であれば誰でも利用できる制度です。利用するためには、他の就労系福祉サービスと同様に、自治体への申請を行います。
その後、就労選択支援を行う事業所が就労アセスメントを行い、適切な事業所利用につなげていきます。就労アセスメントによって得られた情報は、通院先の病院、全体のケアプランを立てる事業所など、関係機関に共有されることが特徴です。
また、情報は就労系福祉サービスの利用だけでなく、一般企業への就労を目指す場合にも活用されます。具体的には、ハローワークにおいて就労アセスメントの結果を踏まえて職業指導を行うような仕組みとなっています。
多様化する就労支援サービスの中から、利用者本人が主体的にサービスを選択できるよう、関係機関が適切に連携していくことが求められます。
3.就労ニーズを把握する「就労アセスメント」とは?
就労選択支援において、働く上で必要な能力や適性、必要な配慮などを把握するのが、「就労アセスメント」です。
現在も、就労系福祉サービスの利用開始前に就労アセスメントが実施されています。しかし、把握した情報を踏まえた働き方や就労先の選択には繋がっていない現状があります。地域の関係機関間で、情報を共有して活用していくことが求められているのです。
では、就労アセスメントは、どのような手法を用いて行われるのでしょうか。就労選択支援の導入により実施される就労アセスメントの詳細はまだ決定されていませんが、現在行われている手法をもとに解説します。
3-1 現行の就労アセスメントは1ヶ月間の就労体験により行う
現在実施されている就労アセスメントは、就労継続支援B型事業所を利用する前に、状態把握として用いられています。事業所の利用を検討している障がい者のうち、一部の人が就労アセスメントの実施が義務付けられています。
B型事業所への通所開始前に、1ヶ月間のアセスメント期間を設けて実施されることが一般的です。以下の4つの項目をもとに、対象となる人の就労意欲や集中力、作業能力を評価し、関係機関に共有します。
- 基本的なルール:欠勤の連絡、身だしなみ、健康管理の状況など
- 社会生活 :あいさつ、言葉遣い、作業場の報告・連絡、協調性など
- 作業態度 :集中力の維持、指示内容の理解、作業の正確さや器用さなど
- 作業遂行能力 :体力、作業意欲、危険への対処、交通機関の利用など
参考:厚生労働省「改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル」
就労アセスメントで得た情報は、事業所への通所が可能かどうかを評価するものではありません。あくまで利用者が自分に適した施設を見つけることをサポートするものです。
3-2 知的障害、発達障害を持つ方に有効なBWAP2
知的障害や発達障害を持つ方の就労アセスメント方法として注目されているのが、「BWAP2」です。作業能力だけでなく、職場に適応するために必要な対人関係やコミュニケーションスキルまでを評価するものです。
特に、発達障害の特性を持っている人は、仕事の内容よりも、「上司に質問するタイミングが分からない」などの面でつまずくことが少なくありません。対人関係やコミュニケーションの面での特性や必要な配慮を支援者と共有しておくことで、離職を防げるでしょう。
具体的には、次の4つの項目を元に評価します。15分程度という短時間で実施できるアセスメント方法であるため、受ける人の負担も軽いでしょう。
- 仕事の習慣/態度:適切な服装、時間の遵守、出勤率、作業姿勢、食事のマナーなど
- 対人関係 :上司や同僚への対応、感情の安定、集団への受け入れなど
- 認知能力 :数や日にちの概念、記憶力、読解力、金銭管理など
- 仕事の遂行能力 :細かい作業能力、援助要求、仕事の質と量など
4.就労選択支援を活用して適切なサービスを選びましょう
2024年から開始される就労選択支援制度ですが、利用する人にとっては、自分に合わせたサービス選択を助けるよい制度になるでしょう。
障がいの特徴は人によって異なります。そのため、自分に合わせたサービスや配慮とは何かを整理し、支援者と共有しておくことが大切です。サスケ・アカデミーでは、一人ひとりに合わせたサポートを意識しております。無料でご相談をお受けしておりますので、ぜひ一度ご連絡ください。