今回のテーマは、ずばりテレワークです。
サスケグループ(就労継続支援A型事業所サスケ工房、多機能型事業所サスケ・アカデミー)では、毎月利用者さんに向けて障がい者対象のテレワーク求人調査・情報提供を行っています。
これは企業に直接応募が可能な求人を、ハローワークや民間求人サイトなどで隈なく調査し、リスト化して利用者さんに提供しているものです。
また、企業のオンライン採用説明会などがあれば、その都度参加を呼び掛けるようにしています。
この取り組みとしてはすでに3年ほどになりますが、過去にテレワーク就労をされた方についてはいずれも継続して働かれていると聞いており、定着率の高いものとなっています。
手前みそになりますが実は私自身も、いま本部社員として完全在宅として働かせていただいています。
社員となってちょうど3年が経ちましたが、実は社員になる前のサスケ工房の利用者時代もほぼ完全在宅に近い形で勤務をさせていただいていました。
テレワークについては今更言うまでもありませんが、コロナ禍以降、急速に世に浸透しました。
しかし5類移行後は、以前の出社前提の風潮にやや振り戻された感もあります。
ただそうは言っても、障がいがある身としてはこの働き方によってどれだけ救われたかわかりません。
その恩恵を受けている立場として、いつかこのことをテーマにしてお伝えしたいと思っていました。
今回ちょうどそれに関連する以下の記事がありましたので、「テレワークに求められるものとは」と題して、この機会に考察をしてみたいと思います。
オリィ研究所、障害者雇用のテレワーク実態調査を実施 障害者にとって“場所の制約を受けない就業選択肢”が大きなメリットに(PRTIMES_2024.07.17より)
障がい者のテレワークにおける3つの特徴
“「人類の孤独を解消する」を理念とし、テクノロジーで移動困難者のはたらく選択肢を豊かにするサービスを提供しているオリィ研究所(本社:東京都中央区、代表取締役 吉藤 健太朗・笹山 正浩、以下「オリィ研究所」)は、7月24日の「テレワーク・デイ」を機に、障害者のテレワークに関する実態調査を実施しました。”
みなさん、7月24日が「テレワーク・デイ」であることをご存じでしたでしょうか?
調べてみると、2017年に総務省や東京都が中心となって、2020年東京オリンピックの開会式が予定されていた7月24日にちなんで「テレワーク・デイ」と定めたとのことです。
今回調査をされたオリィ研究所については、カフェでの接客などで活躍する分身ロボット「オリヒメ」の開発で有名ですが、以前こちらのブログ(障がい者の新たな働き方:未来のテレワーク)でも取り上げましたので、合わせて参照していただければと思います。
まず記事の冒頭では、調査結果から障がい者のテレワークの特徴として、以下の3つのポイントをまとめられていました。
①場所の制約を受けない就業選択肢
②通勤の負荷軽減・業務への集中しやすさ
③コミュニケーションのメリット・デメリット
これらは一般的なテレワークとしての特徴とも言えますが、私などの身体障がい者にとっては、おそらく健常者の方以上に、①②のメリットは大きいと感じているのは間違いありません。
特に①に関しては以下の調査結果が出ています。
“特に1都3県を除く地域においては、「出社範囲に応募できる求人がないことが解決できる」や、「居住エリア以外の就職・転職の選択肢が得られる」といった“場所の制約をうけない就業選択肢”をメリットと選んだ回答者が7割を超えました。”
このことについては、中四国に展開している弊社としても非常に重要なところで、地方ではなかなか完全在宅勤務としての求人募集をしている会社が少ないという現実があります。
弊社での調査では、毎月20~30件ほどの新規求人が上がってきますが、その7~8割は東京所在の企業となっています。
しかし、テレワークであればどこに住んでいても東京の企業に雇用され、しかも東京の水準としての賃金をもらえるというメリットもあるのです。
また先の3つの特徴の話に戻りますが、精神障がい者にとっても特に②③の部分は健常者以上に大きなメリットと感じていると思われます。
しかし、③については反面、デメリットもあるという点に注意をしたいところです。
デメリットから考えるテレワーク就労の要件
“デメリットとして「コミュニケーションがとりにくい」を選んだ回答者が41%”
人の目が気になって業務に集中が出来ないという方にとってはテレワークほどありがたい環境はないとも言えるのですが、一方ではどのタイミングで相手に連絡をしていいのか戸惑う方もいるということですね。
相手の様子が分からないというのは、確かにいろんな面で不安がありますね。
しかし、今はどの会社でも定期的に行われるミーティング以外で、いきなりオンラインで通話をかけるといった頻度は少ないのではないでしょうか?
どちらかというと、チャットなどのテキストコミュニケーションが主流ですので、そう言った点においては過度に心配をする必要はないと思います。
といっても既読がついているのにいっこうにレスポンスがない、と言った場合は悶々とすることは確かにあります。
もしかしたら相手は怒っているのだろうかとか、無視されたのだろうかとかいろいろと想像してしまうのは、障がいの有無以前の人間の性とも言えますが、プライベートでのやりとりではないので、それは現実的ではない想像だと自分に言い聞かせてください。
きっと何か他のことで忙しいのだろうというくらいの気持ちを持つようにすることが大切です。
他にも以下の引用のようにテレワーク就労における心配ごとの意見はいくつか見受けられます。
“・顔を合わせたコミュニケーションは少なくなるため、自分の体調等は自ら言葉で表現しなくてはならない
・気軽に聞にくいので、全て言語化や自己発信が必要になる
・自分から連絡できるタイプでないと、コミュニケーションがとりにくい(双方)。
・対面で行えるコミュニケーションをオンラインでスムーズに行える工夫が必要になってくると思います。
・意識的にも物理的にもスペース分けをしないと終業後も業務のことを引きずりがちになる。“
これらを大きくまとめて言えば、「自己発信力」と「自己管理力」の課題とも言えます。
テレワークにおいて企業が重要視する部分にもつながりますので、ここはどうしても乗り越えなければならないところです。
つまりテレワークでの就労を実現させたいのであれば、やはりこの2点についての準備をしていく必要があります。
かく言う私自身も、自己管理力についてはいまだに課題があります。
在宅という環境がアダになり、逆に過集中をしてしまってメリハリをつけることが出来ず、結果的に時間超過が原因で体調を崩すという経験を昨年も経験しました。
そんな私でもあるので説得力がないかもしれませんが、それでもテレワークはメリットの方が多いと感じます。
個人的なことになりますが、持病の褥瘡予防のためには、定期的に体を横に倒して休める環境があることが絶対に必要なのですが、それはまさにテレワークだからこそ実現できているわけで、入退院を繰り返しながらでも今の会社で長く勤めることにつながっています。
記事でも、実際にテレワークで働かれている障がい者の方のポジティブな意見がたくさん紹介されていますので、ぜひ見ていただければと思います。
ただここではあえて、主にデメリットの部分の意見を中心に取り上げました。
これはテレワーク就労での採用は決して簡単ではないという前提のなかで、それでも就労後長く勤められる可能性が高い働き方なので、それぞれが現状の課題をクリアしてでも目指す価値があるとの思いからです。
どんな仕事、環境も最初は慣れずにうまくいかないところから始まります。
しかし、それを乗り越えた先には大きな幸せが待っているはずです。
これから就職を目指されている方は、テレワークを選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。
41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。
これからの目標・夢
障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。