コラム

障がい者雇用の未来:量+質の実現に向けて

いよいよ来月から民間企業での障がい者雇用における法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられます。

さらに2年後には2.7%まで引き上げられることが決まっており、これから就労を目指している障がい者の方にとってはまさに追い風の状況とも言えます。

今回は、その法改正を目前にして今後の障がい者雇用のあり方について考察された記事を紹介したいと思います。

障害者雇用、「量+質」の時代へ (イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア_ 2024.03.12より)

“厚生労働省の調査によると、企業で働く障害者は23年6月時点で約64万人にのぼり、20年連続で過去最高を更新した。ただ雇用を義務付けられている企業(約10万8200社)のうち法定雇用率を達成しているのは50.1%。言い換えると半数の企業が未達だ。そのうちの約6割は一人も雇用できていない。”

今回の法定雇用率の2回にわたる引き上げは、過去の流れからみても非常にドラスティックな印象があり、国の本気度が伝わってきます。

その背景としては、上記のように20年連続で障がい者の雇用者数が増加しているとは言っても、まだ半数の企業が法定雇用率を下回っている現実があるのです。

また約64万人の就業という数字をそもそもどう捉えるかということもあります。

令和5年版障害者白書によると、日本国内における障がい者の人口は約1160万人もいるのです。

実に日本全体の障がい者のうち94.5%の人が就業できていないという実態を考えた場合、この20年間の伸びは決して満足いくものではないことは明白です。

特に2018年から雇用義務となった精神障がい者については、確かにそれ以降就業数が伸びてきているのは事実ですが、身体障がい者に比べるとその障がい特性上、なかなか継続して就労すること自体が難しい方も多いと聞きます。

そこにはどんな課題があるのでしょうか。

ただ単に数の問題だけではないということは自ずとわかってきます。

“「大事なのは、企業は障害者一人一人に向き合い、活躍できる環境を整えること」と吉田氏は質の向上を訴える。”

“採用の多くが身体障害者だったときは、主にハードの環境を整えれば対応できた。しかし精神・発達障害者は個性も、それに伴って必要な合理的配慮も一人一人異なる。接し方が分からないという企業も多く、それだけミスマッチも起こりやすくなる。”

ミスマッチという表現がありますが、これが今の企業における障がい者雇用においての最大の問題なのかもしれません。

量を増やしていくとともに、合わせて雇用の質についても同時並行して考えていかなければならない、というのが本記事における主眼テーマと言えます。

障がい者と職場のミスマッチが生じ、雇用の維持や定着が難しくなる原因としては、やはり「とりあえず」採用というレベルにとどまっている企業が多いからではないでしょうか。

この課題に対処するためには、障がい者の能力や適性に合わせた適切な仕事の提供や、企業と障がい者がコミュニケーションを図りながら適切な配慮を行うことが重要です。

言い換えれば、企業が障がい者一人一人に向き合うこと、つまりは雇用の質を向上させることを同時に考えていかなければ、いずれ達成した数はまた逆戻りとなってしまうのです。

じゃあ具体的にどうすればよいか。

日本国内でも、一方でそういった量+質を実現している素晴らしい企業がたくさん存在しています。

そういったモデルとなる企業の内容から学び取るしかないと思います。

この記事には、その一つの企業として、レバレジーズ株式会社での取り組みが紹介されています。

“アルバイト経験もない障害者を含めて一定期間、契約社員として直接雇用する。レバレジーズグループ全体から切り出された事務業務を受託し、パソコンスキルといった事務の実務経験を積んで就業能力を開発する。社会人としての考え方や立ち振る舞いなどビジネスマナーも学ぶ。苦手なコミュニケーション力を身に着けるため出社が原則だ。”

“大事にしているのは、個々の可能性を信じて広げること。後藤氏は「後は本人のやる気次第で実を結べる」と言い切る。そのために障害者個々の体調を面談などでフォローし、モチベーションの向上に取り組む。”

これらのことは、すでに同様に取り組んでいる企業から見れば、当たり前のことのように思うでしょう。

要はその当たり前のこと自体が、理解のみにとどまっていて実践されていない企業が多いということなのでしょう。

この事例に限らず、障がい者雇用について創意工夫をされている企業としては、以前のこのブログで取り上げた「AERAの記事より:障がい者雇用のあり方を考える」でのベネッセビジネスメイトや資生堂(花椿ファクトリー)、東京建物なども非常に参考になる取り組みをされていると言えます。

“「仕事がない」といって障害者雇用に消極的な企業は発想の転換が必要かもしれない。障害者雇用に「正解」はない。”

最後に締めくくられていたこの一文にある「発想の転換」。

現状、人手不足で伸び悩んでいる企業は多いと思います。

そういった企業課題に対しても、このことは大きな意味を持っています。

つまり、これまで様々な事情で能力を発揮できずに活躍できなかった障がい者の方を戦力として能力開拓していくという発想の転換が大切なのです。

もっと言えば、障がい者雇用の質の向上を目指すことが、障がい者だけでなく企業にとってもプラスになるのだと信じることが重要なのだと思います。

その手法についてはまさに「正解」はなく、企業が保有している独自のノウハウや知見を経営理念と融合させることで、必ずや生み出されるものなのだと思います。

就労移行支援 サスケ・アカデミー本部
本部広報/職業指導員
三浦秀章
HIDEAKI MIURA

36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。

41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。

これからの目標・夢

障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。

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