「前の職場を退職してからしばらく働けていない…」「コミュニケーションがうまく取れなくて働きづらい…」 働きたいという気持ちがありながらも、働きづらくて職場に適応できないという方もおられるかもしれません。
働くことをサポートする仕組みとして、「ユニバーサル就労」があります。
自分の状態に応じて給料や雇用形態、勤務時間、業務内容などが柔軟に選択でき、慣らしながら働くことが可能です。
本記事では、ユニバーサル就労の考え方や特徴、具体的な支援方法について解説します。
目次
ユニバーサル就労とは?
ユニバーサル就労とは、障がいの有無にかかわらず、働きづらさを抱えている人たちが就労できることを目指す支援です。
千葉県を拠点にする社会福祉法人生活クラブが考案した言葉で、静岡県富士市では「ユニバーサル就労推進条例」を定め、働き手を増やす政策としても注目されています。
企業と雇用契約を結ぶ一般就労と、就労継続支援(作業所)を始めとする福祉的就労の間を埋める就労支援です。
個人の特性や健康状態に応じて、柔軟な働き方ができることが一般就労や福祉的就労と異なる点です。
具体的な特徴について3つを挙げて解説します。
障がいの有無にかかわらない就労支援
ユニバーサル就労は、障がいの有無にかかわらず、働きづらさを抱えている人たちを支援することを目的とします。
就労継続支援事業所(作業所)は、基本的には障がいを抱えている人たちのサポートを行います。
利用のためには医師の診断や障がい者手帳が必要となるケースが多いでしょう。
一方、ユニバーサル就労では、診断や手帳の有無にかかわらず、利用可能な就労支援です。
働きづらさの原因を分析し、個人に合わせた支援プランを立てながら取り組んでいきます。
就労訓練をした会社にそのまま就職できる
ユニバーサル就労では、一般就労の「訓練」という形で働くことが可能です。
提携先によっては、訓練期間を経て正式に職員として採用されることもあります。
雇用契約を結ぶかどうかも選択でき、無給や短時間労働など多様な働き方ができます。
「給料をもらって働くのはプレッシャーだ」という場合でも、働きやすいでしょう。
また、雇用契約を結んで給料をもらいながら働く場合でも、支援のスタッフが個別にサポートします。
定期的な面談や支援計画を通してステップアップできるような体制なので、安心して働けるでしょう。
柔軟な仕事の選択が可能
ユニバーサル就労では、「業務分解」という取り組みにより、業務を切り出します。
業務分解とは、一人の従業員が取り組んでいる業務を細かく分解することをいいます。
分解した業務をユニバーサル就労で働く人の特性に合わせてマッチングし、割り振っていくのです。
例えば、以下のような作業が挙げられます。
- 事務職:シュレッダー作業、書類の封入作業、伝票のファイリング
- 高齢者施設:利用者の見守り、水回りや窓の清掃、草抜き
細分化された業務の中から、自分に合った仕事を選択できるため、特性を生かした働き方をしやすいといえるでしょう。
ユニバーサル就労の4つの段階
ユニバーサル就労では、働き方について以下のような4つの段階があります。
自分の状態に合わせてどの段階からスタートするかを選ぶことが可能です。
「働いていない期間が長いから無償コミューターから始める」「雇用型になったが、調子が悪くなったから非雇用型に戻す」などの柔軟な変更もできます。
(引用元:生活クラブ風の村のユニバーサル就労)
【ユニバーサル就労の4つの段階】
1.無償コミューター
2.有償コミューター
3.UW雇用Ⅱ(最賃保障職員)
4.UW雇用Ⅰ(一般賃金職員)
1.無償コミューター
働くための準備期間としての段階です。
雇用契約は結ばずに「コミューター」として働きます。
コミューターとは「継続的に通う人」という意味で、給料をもらわずに働くため、社会に出るための初めの一歩として適しているといえるでしょう。
2.有償コミューター
雇用契約は結びませんが最低賃金以下の報酬をもらって働く形態です。
働くことに慣れ、徐々にできる業務を増やしていき、条件に応じて給料が上がっていく仕組みになっています。
3.UW雇用Ⅱ(最賃保障職員)
雇用契約を結び、最低賃金で働く段階です。
雇用契約を結んでも、就労に関するサポートを受けながら働けます。
仕事の内容としては、専門的な業務ではないものの、ほぼ一人分の業務を担当します。
4.UW雇用Ⅰ(一般賃金職員)
一定のサポートを受けながら、他の職員と同じ仕事が行う段階です。
職場で決められた規定通りの給料となります。
サポートの必要がなくなった段階で、一般就労に切り替わります。
一般就労に切り替わったあとは、同じ職場で働き続けるケースと異なる職場で働くケースがあるでしょう。
障がいにこだわらない就労支援が重要
ユニバーサル就労は、障がいがある人に限定せず、働きづらい人の悩みを解決するための新しい支援の形です。
同じ障がいでも、働きづらさは人によって異なります。
一人ひとりの特性に合わせた業務につけるよう、マッチングを重視したサービスであることが特徴です。
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