合理的配慮という言葉については、障害福祉の分野においては常識的な概念として理解されていますが、果たして一般的にどこまで知られているものなのでしょうか?
私の周りの知人・友人に聞いても、聞いたことはあるけどあまりよく知らない、といったような反応のほうが優勢だったりします。
しかし、今月(2024年4月)から障害者差別解消法の改正により、この合理的配慮が社会的に義務化されたので、少しでも多くの人に合理的配慮について周知していく必要があります。
そこで、今回はこのタイミングに合わせて出された以下の合理的配慮義務化の記事を紹介したいと思います。
障害者への「合理的配慮」義務化 どこから“過重な負担”? グレーゾーンとの向き合い方(yahoo!JAPANニュース_2024.04.04より)
“障害を理由に「不当な差別的取り扱い」を禁止する、障害者差別解消法が改正され、障害のある人への合理的配慮が4月から義務化された。”
記事冒頭にまず、先にも触れた合理的配慮義務化のことについて触れています。
「合理的配慮」の定義については、文部科学省ホームページ内で「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と記載されています。
少し表現が硬めですが、わかりやすく言い換えるとすれば、障がいの有無に限らず全ての人が平等であるということを基本とし、人権と基本的な自由を当たり前に行使できるように、環境の変更や調整といった配慮をすることということでしょうか。
これまでも当然この考え方は社会や事業者にも求められていましたが、あくまでも努力目標のレベルであり、それではまだ改善されていないという状況のなか、今回の義務化にまで踏み込んだとも言えます。
しかし義務化になったとはいえ、何か明確に罰則規定があるわけではありません。また以下の引用のように合理的配慮について誤解をしているケースもかなり多いようです。
“「経営者側が『合理的配慮は企業側の負担でしかないよね』という誤った捉え方をしているケースもある。合理的配慮という言葉が漠然としていて『何をしたらいいかわからないからハードの投資が必要なんじゃないか』『お金がかかるんじゃないか』のように言葉が一人歩きしているようだ。本来はケースバイケースで対応していけばいい」”
ここで大事なこととしては、配慮を求められている側だけの論理で、配慮できるかどうかの白黒で判断しても本当の意味での改善につながっていかないというところだと思います。
ではどうすればいいのかということについても、この記事のなかでいくつか明確な指針が示されています。
“義務付けられる合意的配慮については、事業者側の「過重な負担にならない範囲で」と定義されているが、この考え方については「例えば飲食業であればお店の規模や従業員数、時間による混雑状況などによって一律には言えないと思うが、『過度な無理はしない』というのが、この合理的配慮の考え方。例えば食事やトイレの介助を依頼された時にそこまでの人的余裕がないのであれば、断ることができる」と説明。”
“「『何時から何時の間であればお店は空いているので対応できる』など、正直に向き合って話していくことが大事。『なんとかしてサービスを提供したいけどどうしても無理』と本音でしっかりと伝えることでトラブルを避けられるはず。なぜなら、日本はもともとおもてなしの文化、ホスピタリティがあり、その点には長けているからだ」”
“「失敗してもいい。次にどう活かしていくかが大事だ。障害がある方と接することなく準備だけをしても完璧な対応ができるわけがない。日頃からいろんなお客様と向き合う機会の中で個別ニーズに応えていく。そんな割合を少し高めていくなど、ちょっとした工夫の積み重ねから取り組んでいけばいい」”
“「車椅子の友人と一緒にレストランに行った際に車椅子という理由だけで頭ごなしに拒否されることがある。理由を教えてくれれば納得できる場合もあるし、こちら側から『では、こういう工夫ができますよ』と伝えるなど、対話が始まる。そういう当たり前のコミュニケーションをまずさせてもらえないでしょうか、というのが基本的な考え方だと思う」”
これらのこと全てに共通することは、つまり対話が大事だということですね。
私自身も当事者だからわかるのですが、障がいのある立場としては、なかなか勇気をもって自らの発信ができない場面というのがけっこうあります。
つまり飲食店に行く際なども、事前に調べたうえで最初からあの店は難しいという判断をしてしまって、勝手にあきらめてしまっていることが多々あります。
結果的に、ごく限られたバリアフリーの環境が整っている店の中から毎回選ぶというようなことをしているわけです。
障がい者の立場としても、もっと自身の胸の内を発露していかなければ、この合理的配慮はいつまで経っても世に浸透しないともいえます。
また、事業者側としては先に引用した誤解した考え方で警戒心を抱くのではなく、まずは相手の意見を聞いたうえで、出来る範囲のことで対応するというスタンスで充分なのだと思います。
物理的に限界があるのに、それが出来ないからと言って反発するような人はそこまでいないと思うのです。
双方のわずかな前進の積み重ねのうえに今回の法改正の本当の目的が達成されるのだと思います。
“政府は、合理的配慮のヒントとなる事例についてリーフレットやデータベースで情報を提供している。研修を実施した企業から、様々な相談を受けてきた志村さんは、「こうした情報も活用しながら、柔軟に取り組んでほしい」と話す。”
合理的配慮についてもっと詳しく理解したいという場合は、上記のように内閣府からのリーフレットに具体例を交えてより詳しく説明されていますので、見ていただければと思います。
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/daikatsuji_print.pdf(出典:内閣府ホームページ )
個人的にはP.29に説明されている、障害の社会モデルの考え方が、この合理的配慮の根幹となっているので、基本的なこととして抑えるべき点だと感じました。
以前の私のブログ「ツナガル・ブックが果たす役割とは:障害の社会モデルの考え方」でも少し触れさせていただいた考え方となりますが、つまり障害とは社会の側の障壁があることによって生じるものという考え方で、その前提のうえにこの合理的配慮が求められているのだということです。
36歳の冬、先天性の脊髄動静脈奇形を発症。 リスクの高い手術に挑むが最終的に完全な 歩行困難となり、障がい者手帳2級を取得。当時関東に赴任していた会社を辞め、地元の愛媛新居浜に戻り、自暴自棄の日々を過ごす。
41歳の冬、奇跡的にサスケ工房設立を知り福祉サービス利用者として8年半、鉄骨図面チェックの仕事に従事する。 50歳で一念発起しサスケグループ社員となる。
これからの目標・夢
障がいで困っている人の就職のお役に立ち、一人でも多くの仲間を増やすこと。