ひきこもりとは、自宅から外出せず社会との交流を避けている状態を指す言葉です。
状態を指す言葉であり、病名ではありません。
しかし、背景にはうつ病をはじめとした精神疾患が関係している可能性もあり、治療が必要であるケースも多いとされます。
適切な治療を行わないと長期化してしまうケースも少なくありません。
本記事では、ひきこもりとうつ病などの精神疾患との関連性について解説します。
ひきこもり状態が続いていてお困りの方は、精神症状がないかどうか確認してみましょう。
目次
ひきこもりとは?
ひきこもりとは、さまざまな原因から仕事に就くことや通学、交遊などの社会的参加を避けている状態を指します。
厚生労働省の定義では、6カ月以上にわたって家庭内にとどまり続けている状態とされています。
ひきこもり状態になった主な理由として多いのは、「退職」や「病気」、「人間関係がうまくいかなかったこと」です。
令和5年度版厚生労働白書によると、各年代別での理由は以下の通りとなっています。
【15~39歳】
- 退職したこと(21.5%)
- 人間関係がうまくいかなかったこと(20.8%)
- 中学時代の不登校(18.1%)
- 新型コロナウイルス感染症が流行したこと(18.1%)
【40~64歳】
- 退職したこと(36.0%)
- 病気(22.1%)
- 新型コロナウイルス感染症が流行したこと(19.8%)
- 人間関係がうまくいかなかったこと(17.4%)
ひきこもりに至る理由はさまざまですが、何らかの失敗や挫折から社会になじめず、関係を回避してしまうことが多いといえるでしょう。
ひきこもりと精神疾患の関係
ひきこもりの方の約半数は3年以上にわたって続いており、社会参加をする不安や恐怖が強いケースが少なくありません。
「内向的な性格だから」「過去に嫌な思いをしたから」という理由だけではなく、うつ病をはじめとした精神疾患が影響していることがあります。
具体的にはどのような精神疾患が影響しているのでしょうか。
代表的な3つの精神疾患を紹介します。
うつ病
うつ病とは、1日中気分が落ち込みやる気が出なかったり、少し動くと疲れやすかったりする気分障害の一つです。
人と関わる場所に行こうとしても、意欲が低下して動けなかったり、外出したとしてもひどく疲れてしまったりするかもしれません。
また、うつ病は不眠の症状とも合併するケースが多いとされます。
睡眠リズムが乱れ、昼夜逆転の生活となってしまうと、日中に活動することが難しくなります。
さまざまなストレスが原因となり、脳がうまく働かなくなっている状態であり、正常な状態を取り戻すためには治療が必要です。
統合失調症
統合失調症とは、幻覚や妄想などの非現実的な体験を症状とする精神疾患の一つです。
「自分の悪口を言われる幻聴が聞こえる」「根拠がないのに、自分の噂話をしていると感じる」などの症状から、社会になじむことが難しくなります。
幻覚や妄想だけでなく、意欲が低下する陰性症状も統合失調症の特徴です。
自分の世界に閉じこもったり、意欲が低下し感情表現が乏しくなったりする症状です。
自発性が低下するため、長期間のひきこもりにつながりやすいといえます。
発達障害
発達障害とは、脳の発達の偏りによって日常生活や社会適応上の支障をきたしている状態を指します。
コミュニケーションの偏りを示す自閉スペクトラム症(ASD)や、不注意や多動、衝動性を特徴とする注意欠如多動症(ADHD)が代表的です。
発達障害の特性からうまく能力を発揮できず、失敗した体験からひきこもりになるケースもあります。
また、二次障害としてうつの症状が生じており、薬物治療が必要な場合もあるでしょう。
回復のためには、自分自身の特性を理解し、周囲のサポートを得ていくことが大切です。
その上で、本来の力を発揮できる環境を模索していけるとよいでしょう。
ひきこもりの相談はどこにすればいい?
精神疾患が原因となり、ひきこもり状態が続いている場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
ケース別に3つのパターンを紹介します。
治療を受けたい:精神科病院、クリニック
精神疾患が疑われる場合は、お薬を服用しながら専門的な治療を受けることが必要となります。
うつ病や統合失調症は、向精神薬による治療を行い、脳の働きを整え、症状の緩和を目指します。
発達障害の場合、薬物治療が必須ではありませんが、精神的な症状が合併している場合は、薬物治療が有効です。
本人の受診が難しくても、医師や相談員による家族相談が受けられる病院もあります。
病院選びに迷うときは、地域の保健所や精神保健福祉センターでも相談を受け付けていますので、問い合わせてみましょう。
とりあえず相談したい:ひきこもり地域支援センター
どのような支援を受ければいいかわからないが相談したいという場合には、ひきこもり地域支援センターがおすすめです。
ひきこもり地域支援センターは、ひきこもりに特化した支援が受けられる機関です。
全国の都道府県や指定都市に設置されています。
社会福祉士や精神保健福祉士、公認心理師などの専門職が、ひきこもりの方や家族に対して相談を行い、適切な支援につなげます。
電話や対面による相談だけでなく、必要に応じて自宅への訪問相談も行っているところも特徴です。
「どのような支援が必要か相談したい」といった方にはおすすめの相談機関だといえるでしょう。
参考:厚生労働省「ひきこもり推進事業 ひきこもり地域支援センターの住所・連絡先」
働きたい:就労移行支援
働きたいという希望をもっている場合は、就労支援機関に相談するとよいでしょう。
精神疾患や発達障害が背景にある場合、就労移行支援を利用するとよいでしょう。
就労移行支援とは、何らかの障がいをもつ方への一般就労に向けたサポートや訓練を行うものです。
職場を想定した実習や面接練習、ビジネスマナーの習得など就職のための準備を行います。
一定期間、決められた時間に通所するため、就職する際には会社からは継続的に通える人材として安心感を与えられるでしょう。
事業所によっては、働き出してからもフォローしてもらえるところもあります。
就職後の悩みがあれば、スタッフが会社に伝えてくれるので、安心して働くことが可能でしょう。
ひきこもりの原因に病気が潜んでいることもある
ひきこもりには、さまざまな原因がありますが、精神疾患が関係しているケースが少なくありません。
意欲の低下や疲れやすさがある場合、精神疾患を疑い、適切なサポートを受けることが大切です。
サスケ・アカデミーでは、現在ひきこもりの状態にある方の就労サポートを行っています。
精神疾患や発達障害の特徴にあわせて対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。